7.4 可変長メモリ・プール
RI850V4では,処理プログラムから動的なメモリ操作要求が行われた際に利用するメモリ領域として“可変長メモリ・プール”を提供しています。
なお,可変長メモリ・プールに対する動的なメモリ操作は,任意サイズの可変長メモリ・ブロックを単位として行われます。
RI850V4では,可変長メモリ・プールの静的な生成のみサポートしています。処理プログラムからサービス・コールを発行して動的に生成することはできません。
可変長メモリ・プールの静的生成とは,システム・コンフィギュレーション・ファイルで静的API“CRE_MPL”を使用して可変長メモリ・プールを定義することをいいます。
可変長メモリ・ブロックの獲得は,以下に示したサービス・コールを処理プログラムから発行することにより実現されます。
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get_mpl
パラメータ
mplidで指定された可変長メモリ・プールからパラメータ
blkszで指定されたサイズ(+4バイト)の可変長メモリ・ブロックを獲得し,その先頭アドレスをパラメータ
p_blkで指定された領域に格納します。
ただし,本サービス・コールを発行した際,対象可変長メモリ・プールから可変長メモリ・ブロックを獲得することができなかった(要求サイズ分の連続する空き領域が存在しなかった)場合には,可変長メモリ・ブロックの獲得は行わず,自タスクを対象可変長メモリ・プールの待ちキューにキューイングしたのち,RUNNING状態からWAITING状態(可変長メモリ・ブロック獲得待ち状態)へと遷移させます。
なお,可変長メモリ・ブロック獲得待ち状態の解除は,以下の場合に行われ,可変長メモリ・ブロック獲得待ち状態からREADY状態へと遷移します。
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rel_mplの発行により,対象可変長メモリ・プールに要求サイズを満足する可変長メモリ・ブロックが返却された
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irel_mplの発行により,対象可変長メモリ・プールに要求サイズを満足する可変長メモリ・ブロックが返却された
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rel_waiの発行により,可変長メモリ・ブロック獲得待ち状態を強制的に解除された
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irel_waiの発行により,可変長メモリ・ブロック獲得待ち状態を強制的に解除された
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#include <kernel.h> /*標準ヘッダ・ファイルの定義*/
#include <kernel_id.h> /*システム情報ヘッダ・ファイルの定義*/
void
task ( VP_INT exinf )
{
ER ercd; /*変数の宣言*/
ID mplid = ID_MPL1; /*変数の宣言,初期化*/
UINT blksz = 256; /*変数の宣言,初期化*/
VP p_blk; /*変数の宣言*/
............
............
/*可変長メモリ・ブロックの獲得*/
ercd = get_mpl ( mplid, blksz, &p_blk );
if ( ercd == E_OK ) {
............ /*正常終了処理*/
............
/*可変長メモリ・ブロックの返却*/
rel_mpl ( mplid, p_blk );
} else if ( ercd == E_RLWAI ) {
............ /*強制終了処理*/
............
}
............
............
}
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備考1 RI850V4では,可変長メモリ・ブロックの獲得処理を“4の整数倍値”を単位として行います。したがって,パラメータ
blkszに4の整数倍値以外の値が指定された場合には,4の整数倍値に繰り上げられます。
備考2
RI850V4では,獲得した可変長メモリ・ブロックを管理するために4バイトの領域(管理ブロック)を必要とします。したがって,本サービス・コールを発行した際には,“blksz + 4”バイトの領域が対象可変長メモリ・プールから確保されることになります。
備考3
RI850V4では,可変長メモリ・ブロックを獲得する際,メモリ・クリア処理を行っていません。したがって,獲得した可変長メモリ・ブロックの内容は不定となります。
備考4 自タスクを対象可変長メモリ・プールの待ちキューにキューイングする際のキューイング方式は,コンフィギュレーション時に定義された順(FIFO順,優先度順)に行われます。
備考5
rel_wai,または
irel_waiの発行により可変長メモリ・ブロック獲得待ち状態を解除された場合,パラメータ
p_blkで指定された領域の内容は不定となります。
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pget_mpl,
ipget_mpl
パラメータ
mplidで指定された可変長メモリ・プールからパラメータ
blkszで指定されたサイズ(+4バイト)の可変長メモリ・ブロックを獲得し,その先頭アドレスをパラメータ
p_blkで指定された領域に格納します。
ただし,本サービス・コールを発行した際,対象可変長メモリ・プールから可変長メモリ・ブロックを獲得することができなかった(要求サイズ分の連続する空き領域が存在しなかった)場合には,可変長メモリ・ブロックの獲得は行わず,戻り値としてE_TMOUTを返します。
以下に,本サービス・コールの記述例を示します。
#include <kernel.h> /*標準ヘッダ・ファイルの定義*/
#include <kernel_id.h> /*システム情報ヘッダ・ファイルの定義*/
void
task ( VP_INT exinf )
{
ER ercd; /*変数の宣言*/
ID mplid = ID_MPL1; /*変数の宣言,初期化*/
UINT blksz = 256; /*変数の宣言,初期化*/
VP p_blk; /*変数の宣言*/
............
............
/*可変長メモリ・ブロックの獲得(ポーリング)*/
ercd = pget_mpl ( mplid, blksz, &p_blk );
if ( ercd == E_OK ) {
............ /*ポーリング成功処理*/
............
/*可変長メモリ・ブロックの返却*/
rel_mpl ( mplid, p_blk );
} else if ( ercd == E_TMOUT ) {
............ /*ポーリング失敗処理*/
............
}
............
............
}
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備考1 RI850V4では,可変長メモリ・ブロックの獲得処理を“4の整数倍値”を単位として行います。したがって,パラメータ
blkszに4の整数倍値以外の値が指定された場合には,4の整数倍値に繰り上げられます。
備考2
RI850V4では,獲得した可変長メモリ・ブロックを管理するために4バイトの領域(管理ブロック)を必要とします。したがって,本サービス・コールを発行した際には,“blksz + 4”バイトの領域が対象可変長メモリ・プールから確保されることになります。
備考3
RI850V4では,可変長メモリ・ブロックを獲得する際,メモリ・クリア処理を行っていません。したがって,獲得した可変長メモリ・ブロックの内容は不定となります。
備考4 本サービス・コールを発行した際,対象可変長メモリ・プールから可変長メモリ・ブロックを獲得することができなかった(要求サイズ分の連続する空き領域が存在しなかった)場合,パラメータ
p_blkで指定された領域の内容は不定となります。
-
tget_mpl
パラメータ
mplidで指定された可変長メモリ・プールからパラメータ
blkszで指定されたサイズ(+4バイト)の可変長メモリ・ブロックを獲得し,その先頭アドレスをパラメータ
p_blkで指定された領域に格納します。
ただし,本サービス・コールを発行した際,対象可変長メモリ・プールから可変長メモリ・ブロックを獲得することができなかった(要求サイズ分の連続する空き領域が存在しなかった)場合には,可変長メモリ・ブロックの獲得は行わず,自タスクを対象可変長メモリ・プールの待ちキューにキューイングしたのち,RUNNING状態からタイムアウト付きのWAITING状態(可変長メモリ・ブロック獲得待ち状態)へと遷移させます。
なお,可変長メモリ・ブロック獲得待ち状態の解除は,以下の場合に行われ,可変長メモリ・ブロック獲得待ち状態からREADY状態へと遷移します。
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rel_mplの発行により,対象可変長メモリ・プールに要求サイズを満足する可変長メモリ・ブロックが返却された
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irel_mplの発行により,対象可変長メモリ・プールに要求サイズを満足する可変長メモリ・ブロックが返却された
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rel_waiの発行により,可変長メモリ・ブロック獲得待ち状態を強制的に解除された
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irel_waiの発行により,可変長メモリ・ブロック獲得待ち状態を強制的に解除された
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パラメータ tmoutで指定された待ち時間が経過した
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#include <kernel.h> /*標準ヘッダ・ファイルの定義*/
#include <kernel_id.h> /*システム情報ヘッダ・ファイルの定義*/
void
task ( VP_INT exinf )
{
ER ercd; /*変数の宣言*/
ID mplid = ID_MPL1; /*変数の宣言,初期化*/
UINT blksz = 256; /*変数の宣言,初期化*/
VP p_blk; /*変数の宣言*/
TMO tmout = 3600; /*変数の宣言,初期化*/
............
............
/*可変長メモリ・ブロックの獲得(タイムアウト付き)*/
ercd = tget_mpl ( mplid, blksz, &p_blk, tmout );
if ( ercd == E_OK ) {
............ /*正常終了処理*/
............
/*可変長メモリ・ブロックの返却*/
rel_mpl ( mplid, p_blk );
} else if ( ercd == E_RLWAI ) {
............ /*強制終了処理*/
............
} else if ( ercd == E_TMOUT ) {
............ /*タイムアウト処理*/
............
}
............
............
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}
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備考1 RI850V4では,可変長メモリ・ブロックの獲得処理を“4の整数倍値”を単位として行います。したがって,パラメータ
blkszに4の整数倍値以外の値が指定された場合には,4の整数倍値に繰り上げられます。
備考2
RI850V4では,獲得した可変長メモリ・ブロックを管理するために4バイトの領域(管理ブロック)を必要とします。したがって,本サービス・コールを発行した際には,“blksz + 4”バイトの領域が対象可変長メモリ・プールから確保されることになります。
備考3
RI850V4では,可変長メモリ・ブロックを獲得する際,メモリ・クリア処理を行っていません。したがって,獲得した可変長メモリ・ブロックの内容は不定となります。
備考4 自タスクを対象可変長メモリ・プールの待ちキューにキューイングする際のキューイング方式は,コンフィギュレーション時に定義された順(FIFO順,優先度順)に行われます。
備考5
rel_wai,または
irel_waiの発行,または待ち時間の経過により可変長メモリ・ブロック獲得待ち状態を解除された場合,パラメータ
p_blkで指定された領域の内容は不定となります。
可変長メモリ・ブロックの返却は,以下に示したサービス・コールを処理プログラムから発行することにより実現されます。
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rel_mpl,
irel_mpl
パラメータ
mplidで指定された可変長メモリ・プールにパラメータ
blkで指定された可変長メモリ・ブロックを返却します。
可変長メモリ・ブロックを返却したあと,対象可変長メモリ・プールの待ちキューにキューイングされているタスクをキューの先頭から調べていき,待ちタスクが要求するサイズのメモリを割り当てられる場合はメモリを割り当てます。この動作を待ちキューにタスクがなくなるか,メモリが割り当てられなくなるまで繰り返します。これにより,メモリを獲得できたタスクは,待ちキューから外れ,WAITING状態(可変長メモリ・ブロック獲得待ち状態)からREADY状態へ,またはWAITING-SUSPENDED状態からSUSPENDED状態へと遷移します。
以下に,本サービス・コールの記述例を示します。
#include <kernel.h> /*標準ヘッダ・ファイルの定義*/
#include <kernel_id.h> /*システム情報ヘッダ・ファイルの定義*/
void
task ( VP_INT exinf )
{
ER ercd; /*変数の宣言*/
ID mplid = ID_MPL1; /*変数の宣言,初期化*/
UINT blksz = 256; /*変数の宣言,初期化*/
VP blk; /*変数の宣言*/
............
............
/*可変長メモリ・ブロックの獲得*/
ercd = get_mpl ( mplid, blksz, &blk );
if ( ercd == E_OK ) {
............ /*正常終了処理*/
............
rel_mpl ( mplid, blk ); /*可変長メモリ・ブロックの返却*/
} else if ( ercd == E_RLWAI ) {
............ /*強制終了処理*/
............
}
............
............
}
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備考1 RI850V4では,可変長メモリ・ブロックを返却する際,メモリ・クリア処理を行っていません。したがって,返却された可変長メモリ・ブロックの内容は不定となります。
備考2 可変長メモリ・ブロックを返却する際は,必ず獲得した可変長メモリ・プールに対して本サービス・コールを発行してください。異なる可変長メモリ・プールに対して本サービス・コールを発行してもエラーにはなりませんが,以後の動作は保証されません。
可変長メモリ・プール詳細情報の参照は,以下に示したサービス・コールを処理プログラムから発行することにより実現されます。
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ref_mpl,
iref_mpl
パラメータ
mplidで指定された可変長メモリ・プールの可変長メモリ・プール詳細情報(待ちタスクの有無,空き可変長メモリ・ブロックの合計サイズなど)をパラメータ
pk_rmplで指定された領域に格納します。
以下に,本サービス・コールの記述例を示します。
#include <kernel.h> /*標準ヘッダ・ファイルの定義*/
#include <kernel_id.h> /*システム情報ヘッダ・ファイルの定義*/
void
task ( VP_INT exinf )
{
ID mplid = ID_MPL1; /*変数の宣言,初期化*/
T_RMPL pk_rmpl; /*データ構造体の宣言*/
ID wtskid; /*変数の宣言*/
SIZE fmplsz; /*変数の宣言*/
UINT fblksz; /*変数の宣言*/
ATR mplatr; /*変数の宣言*/
............
............
ref_mpl ( mplid, &pk_rmpl ); /*可変定長メモリ・プール詳細情報の参照*/
wtskid = pk_rmpl.wtskid; /*待ちタスクの有無の獲得*/
fmplsz = pk_rmpl.fmplsz; /*空き可変長メモリ・ブロックの合計サイズの獲得*/
fblksz = pk_rmpl.fblksz; /*空き可変長メモリ・ブロックの最大サイズの獲得*/
mplatr = pk_rmpl.mplatr; /*属性の獲得*/
............
............
}
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