5.3 イベントフラグ
マルチタスク処理では,あるタスクの処理結果が出るまでの間,他タスクが処理の実行を待つといったタスク間の待ち合わせ機能(事象の発生有無を判断できる機能)が必要となります。そこで,RI600V4では,このようなタスク間の待ち合わせ機能として“32ビット幅のイベントフラグ”を提供しています。
- set_flg,iset_flg
パラメータflgidで指定されたイベントフラグのビット・パターンとパラメータsetptnで指定されたビット・パターンの論理和ORをとり,その結果を対象イベントフラグにセットします。
そして,待ちキューの順に待ちキューにつながれているタスクの待ち解除条件を満たすかどうかを調べます。待ち解除条件を満たせば,該当タスクを待ちキューから外し,WAITING状態(イベントフラグ待ち状態)からREADY状態へ,またはWAITING-SUSPENDED状態からSUSPENDED状態へと遷移させます。このとき,対象のイベントフラグ属性にTA_CLR属性が指定されている場合には,イベントフラグのビット・パターンを0クリアし,処理を終了します。
以下に,本サービス・コールの記述例を示します。
パラメータflgidで指定されたイベントフラグのビット・パターンとパラメータsetptnで指定されたビット・パターンの論理和ORをとり,その結果を対象イベントフラグにセットします。
そして,待ちキューの順に待ちキューにつながれているタスクの待ち解除条件を満たすかどうかを調べます。待ち解除条件を満たせば,該当タスクを待ちキューから外し,WAITING状態(イベントフラグ待ち状態)からREADY状態へ,またはWAITING-SUSPENDED状態からSUSPENDED状態へと遷移させます。このとき,対象のイベントフラグ属性にTA_CLR属性が指定されている場合には,イベントフラグのビット・パターンを0クリアし,処理を終了します。
以下に,本サービス・コールの記述例を示します。
#include "kernel.h" /*標準ヘッダ・ファイルの定義*/ #include "kernel_id.h" /*cfg600が出力するヘッダ・ファイルの定義*/ void task ( VP_INT exinf ) { ID flgid = 1; /*変数の宣言,初期化*/ FLGPTN setptn = 0x00000001UL; /*変数の宣言,初期化*/ ............ ............ set_flg ( flgid, setptn ); /*ビット・パターンのセット*/ ............ ............ } |
- clr_flg,iclr_flg
パラメータflgidで指定されたイベントフラグのビット・パターンとパラメータclrptnで指定されたビット・パターンの論理積ANDをとり,その結果を対象イベントフラグに設定します。
以下に,本サービス・コールの記述例を示します。
パラメータflgidで指定されたイベントフラグのビット・パターンとパラメータclrptnで指定されたビット・パターンの論理積ANDをとり,その結果を対象イベントフラグに設定します。
以下に,本サービス・コールの記述例を示します。
#include "kernel.h" /*標準ヘッダ・ファイルの定義*/ #include "kernel_id.h" /*cfg600が出力するヘッダ・ファイルの定義*/ void task ( VP_INT exinf ) { ID flgid = 1; /*変数の宣言,初期化*/ FLGPTN clrptn = 0xFFFFFFFEUL; /*変数の宣言,初期化*/ ............ ............ clr_flg ( flgid, clrptn ); /*ビット・パターンのクリア*/ ............ ............ } |
- wai_flg(待つ)
パラメータwaiptnで指定された要求ビット・パターンとパラメータwfmodeで指定された要求条件を満足するビット・パターンがパラメータflgidで指定されたイベントフラグに設定されているか否かをチェックします。
なお,要求条件を満足するビット・パターンが対象イベントフラグに設定されていた場合には,対象イベントフラグのビット・パターンをパラメータp_flgptnで指定された領域に格納します。
ただし,本サービス・コールを発行した際,対象イベントフラグのビット・パターンが要求条件を満足していなかった場合には,自タスクを対象イベントフラグの待ちキューにキューイングしたのち,RUNNING状態からWAITING状態(イベントフラグ待ち状態)へと遷移させます。
なお,イベントフラグ待ち状態の解除は,以下の場合に行われます。
パラメータwaiptnで指定された要求ビット・パターンとパラメータwfmodeで指定された要求条件を満足するビット・パターンがパラメータflgidで指定されたイベントフラグに設定されているか否かをチェックします。
なお,要求条件を満足するビット・パターンが対象イベントフラグに設定されていた場合には,対象イベントフラグのビット・パターンをパラメータp_flgptnで指定された領域に格納します。
ただし,本サービス・コールを発行した際,対象イベントフラグのビット・パターンが要求条件を満足していなかった場合には,自タスクを対象イベントフラグの待ちキューにキューイングしたのち,RUNNING状態からWAITING状態(イベントフラグ待ち状態)へと遷移させます。
なお,イベントフラグ待ち状態の解除は,以下の場合に行われます。
#include "kernel.h" /*標準ヘッダ・ファイルの定義*/ #include "kernel_id.h" /*cfg600が出力するヘッダ・ファイルの定義*/ void task ( VP_INT exinf ) { ER ercd; /*変数の宣言*/ ID flgid = 1; /*変数の宣言,初期化*/ FLGPTN waiptn = 14; /*変数の宣言,初期化*/ MODE wfmode = TWF_ANDW; /*変数の宣言,初期化*/ FLGPTN p_flgptn; /*変数の宣言*/ ............ ............ /*ビット・パターンのチェック*/ ercd = wai_flg ( flgid, waiptn, wfmode, &p_flgptn ); if ( ercd == E_OK ) { ............ /*正常終了処理*/ ............ } else if ( ercd == E_RLWAI ) { ............ /*強制終了処理*/ ............ } ............ ............ } |
備考1 RI600V4では,イベントフラグの待ちキューに複数のタスクをキューイング可能とするか否かをコンフィギュレーション時に定義させています。このため,すでに待ちタスクがキューイングされているイベントフラグ(TA_WSGL属性)に対して本サービス・コールを発行した場合,RI600V4は要求条件の即時成立/不成立を問わず,戻り値としてE_ILUSEを返します。
備考2 自タスクを対象イベントフラグ(TA_WMUL属性)の待ちキューにキューイングする際のキューイング方式は,コンフィギュレーション時に定義された順(FIFO順または現在優先度順)に行われます。
ただし,TA_CLR属性が指定されていない場合は,優先度順の指定の場合でもFIFO順に行われます。この振る舞いは,μITRON4.0仕様の範囲外です。
ただし,TA_CLR属性が指定されていない場合は,優先度順の指定の場合でもFIFO順に行われます。この振る舞いは,μITRON4.0仕様の範囲外です。
- pol_flg,ipol_flg(ポーリング)
パラメータwaiptnで指定された要求ビット・パターンとパラメータwfmodeで指定された要求条件を満足するビット・パターンがパラメータflgidで指定されたイベントフラグに設定されているか否かをチェックします。
なお,要求条件を満足するビット・パターンが対象イベントフラグに設定されていた場合には,対象イベントフラグのビット・パターンをパラメータp_flgptnで指定された領域に格納します。
ただし,本サービス・コールを発行した際,対象イベントフラグのビット・パターンが要求条件を満足していなかった場合には,戻り値としてE_TMOUTを返します。
以下に,要求条件wfmodeの指定形式を示します。
パラメータwaiptnで指定された要求ビット・パターンとパラメータwfmodeで指定された要求条件を満足するビット・パターンがパラメータflgidで指定されたイベントフラグに設定されているか否かをチェックします。
なお,要求条件を満足するビット・パターンが対象イベントフラグに設定されていた場合には,対象イベントフラグのビット・パターンをパラメータp_flgptnで指定された領域に格納します。
ただし,本サービス・コールを発行した際,対象イベントフラグのビット・パターンが要求条件を満足していなかった場合には,戻り値としてE_TMOUTを返します。
以下に,要求条件wfmodeの指定形式を示します。
#include "kernel.h" /*標準ヘッダ・ファイルの定義*/ #include "kernel_id.h" /*cfg600が出力するヘッダ・ファイルの定義*/ void task ( VP_INT exinf ) { ER ercd; /*変数の宣言*/ ID flgid = 1; /*変数の宣言,初期化*/ FLGPTN waiptn = 14; /*変数の宣言,初期化*/ MODE wfmode = TWF_ANDW; /*変数の宣言,初期化*/ FLGPTN p_flgptn; /*変数の宣言*/ ............ ............ /*ビット・パターンのチェック*/ ercd = pol_flg ( flgid, waiptn, wfmode, &p_flgptn ); if ( ercd == E_OK ) { ............ /*ポーリング成功処理*/ ............ } else if ( ercd == E_TMOUT ) { ............ /*ポーリング失敗処理*/ ............ } ............ ............ } |
備考1 RI600V4では,イベントフラグの待ちキューに複数のタスクをキューイング可能とするか否かをコンフィギュレーション時に定義させています。このため,すでに待ちタスクがキューイングされているイベントフラグ(TW_WSGL属性)に対して本サービス・コールを発行した場合,RI600V4は要求条件の即時成立/不成立を問わず,戻り値としてE_ILUSEを返します。
- twai_flg(タイムアウト付きで待つ)
パラメータwaiptnで指定された要求ビット・パターンとパラメータwfmodeで指定された要求条件を満足するビット・パターンがパラメータflgidで指定されたイベントフラグに設定されているか否かをチェックします。
なお,要求条件を満足するビット・パターンが対象イベントフラグに設定されていた場合には,対象イベントフラグのビット・パターンをパラメータp_flgptnで指定された領域に格納します。
ただし,本サービス・コールを発行した際,対象イベントフラグのビット・パターンが要求条件を満足していなかった場合には,自タスクを対象イベントフラグの待ちキューにキューイングしたのち,RUNNING状態からタイムアウト付きのWAITING状態(イベントフラグ待ち状態)へと遷移させます。
なお,イベントフラグ待ち状態の解除は,以下の場合に行われます。
パラメータwaiptnで指定された要求ビット・パターンとパラメータwfmodeで指定された要求条件を満足するビット・パターンがパラメータflgidで指定されたイベントフラグに設定されているか否かをチェックします。
なお,要求条件を満足するビット・パターンが対象イベントフラグに設定されていた場合には,対象イベントフラグのビット・パターンをパラメータp_flgptnで指定された領域に格納します。
ただし,本サービス・コールを発行した際,対象イベントフラグのビット・パターンが要求条件を満足していなかった場合には,自タスクを対象イベントフラグの待ちキューにキューイングしたのち,RUNNING状態からタイムアウト付きのWAITING状態(イベントフラグ待ち状態)へと遷移させます。
なお,イベントフラグ待ち状態の解除は,以下の場合に行われます。
#include "kernel.h" /*標準ヘッダ・ファイルの定義*/ #include "kernel_id.h" /*cfg600が出力するヘッダ・ファイルの定義*/ void task ( VP_INT exinf ) { ER ercd; /*変数の宣言*/ ID flgid = 1; /*変数の宣言,初期化*/ FLGPTN waiptn = 14; /*変数の宣言,初期化*/ MODE wfmode = TWF_ANDW; /*変数の宣言,初期化*/ FLGPTN p_flgptn; /*変数の宣言*/ TMO tmout = 3600; /*変数の宣言,初期化*/ ............ ............ /*ビット・パターンのチェック*/ ercd = twai_flg ( flgid, waiptn, wfmode, &p_flgptn, tmout ); if ( ercd == E_OK ) { ............ /*正常終了処理*/ ............ } else if ( ercd == E_RLWAI ) { ............ /*強制終了処理*/ ............ } else if ( ercd == E_TMOUT ) { ............ /*タイムアウト処理*/ ............ } ............ ............ } |
備考1 RI600V4では,イベントフラグの待ちキューに複数のタスクをキューイング可能とするか否かをコンフィギュレーション時に定義させています。このため,すでに待ちタスクがキューイングされているイベントフラグ(TW_WSGL属性)に対して本サービス・コールを発行した場合,RI600V4は要求条件の即時成立/不成立を問わず,戻り値としてE_ILUSEを返します。
備考2 自タスクを対象イベントフラグ(TA_WMUL属性)の待ちキューにキューイングする際のキューイング方式は,コンフィギュレーション時に定義された順(FIFO順または現在優先度順)に行われます。
ただし,TA_CLR属性が指定されていない場合は,常にFIFO順に行われます。この振る舞いは,μITRON4.0仕様の範囲外です。
ただし,TA_CLR属性が指定されていない場合は,常にFIFO順に行われます。この振る舞いは,μITRON4.0仕様の範囲外です。
- ref_flg,iref_flg
パラメータflgidで指定されたイベントフラグのイベントフラグ詳細情報(待ちタスクの有無,現在ビット・パターン)をパラメータpk_rflgで指定された領域に格納します。
以下に,本サービス・コールの記述例を示します。
パラメータflgidで指定されたイベントフラグのイベントフラグ詳細情報(待ちタスクの有無,現在ビット・パターン)をパラメータpk_rflgで指定された領域に格納します。
以下に,本サービス・コールの記述例を示します。
#include "kernel.h" /*標準ヘッダ・ファイルの定義*/ #include "kernel_id.h" /*cfg600が出力するヘッダ・ファイルの定義*/ void task ( VP_INT exinf ) { ID flgid = 1; /*変数の宣言,初期化*/ T_RFLG pk_rflg; /*データ構造体の宣言*/ ID wtskid; /*変数の宣言*/ FLGPTN flgptn; /*変数の宣言*/ ............ ............ ref_flg ( flgid, &pk_rflg ); /*イベントフラグ詳細情報の参照*/ wtskid = pk_rflg.wtskid; /*待ちタスクの有無の獲得*/ flgptn = pk_rflg.flgptn; /*現在ビット・パターンの獲得*/ ............ ............ } |