第6章 拡張同期通信機能
マルチタスク処理では,並行に動作するタスクが限られた数の資源(A/Dコンバータ,ファイルなど)を同時に使用するといった資源使用の競合を防ぐ機能(排他制御機能)が必要となります。そこで,RI850V4では,このような資源使用の競合を防ぐ機能として“ミューテックス”を提供しています。
- loc_mtx
パラメータmtxidで指定されたミューテックスをロックします。
ただし,本サービス・コールを発行した際,対象ミューテックスをロックすることができなかった(すでに他タスクがロックしていた)場合には,自タスクを対象ミューテックスの待ちキューにキューイングしたのち,RUNNING状態からWAITING状態(ミューテックス待ち状態)へと遷移させます。
なお,ミューテックス待ち状態の解除は,以下の場合に行われ,ミューテックス待ち状態からREADY状態へと遷移します。
パラメータmtxidで指定されたミューテックスをロックします。
ただし,本サービス・コールを発行した際,対象ミューテックスをロックすることができなかった(すでに他タスクがロックしていた)場合には,自タスクを対象ミューテックスの待ちキューにキューイングしたのち,RUNNING状態からWAITING状態(ミューテックス待ち状態)へと遷移させます。
なお,ミューテックス待ち状態の解除は,以下の場合に行われ,ミューテックス待ち状態からREADY状態へと遷移します。
#include <kernel.h> /*標準ヘッダ・ファイルの定義*/ #include <kernel_id.h> /*システム情報ヘッダ・ファイルの定義*/ void task ( VP_INT exinf ) { ER ercd; /*変数の宣言*/ ID mtxid = ID_MTX1; /*変数の宣言,初期化*/ ............ ............ ercd = loc_mtx ( mtxid ); /*ミューテックスのロック*/ if ( ercd == E_OK ) { ............ /*ロック状態*/ ............ unl_mtx ( mtxid ); /*ミューテックスのロック解除*/ } else if ( ercd == E_RLWAI ) { ............ /*強制終了処理*/ ............ } ............ ............ } |
- ploc_mtx
パラメータmtxidで指定されたミューテックスをロックします。
ただし,本サービス・コールを発行した際,対象ミューテックスをロックすることができなかった(すでに他タスクがロックしていた)場合には,戻り値としてE_TMOUTを返します。
以下に,本サービス・コールの記述例を示します。
パラメータmtxidで指定されたミューテックスをロックします。
ただし,本サービス・コールを発行した際,対象ミューテックスをロックすることができなかった(すでに他タスクがロックしていた)場合には,戻り値としてE_TMOUTを返します。
以下に,本サービス・コールの記述例を示します。
#include <kernel.h> /*標準ヘッダ・ファイルの定義*/ #include <kernel_id.h> /*システム情報ヘッダ・ファイルの定義*/ void task ( VP_INT exinf ) { ER ercd; /*変数の宣言*/ ID mtxid = ID_MTX1; /*変数の宣言,初期化*/ ............ ............ ercd = ploc_mtx ( mtxid ); /*ミューテックスのロック(ポーリング)*/ if ( ercd == E_OK ) { ............ /*ポーリング成功処理*/ ............ unl_mtx ( mtxid ); /*ミューテックスのロック解除*/ } else if ( ercd == E_TMOUT ) { ............ /*ポーリング失敗処理*/ ............ } ............ ............ } |
- tloc_mtx
パラメータmtxidで指定されたミューテックスをロックします。
ただし,本サービス・コールを発行した際,対象ミューテックスをロックすることができなかった(すでに他タスクがロックしていた)場合には,自タスクを対象ミューテックスの待ちキューにキューイングしたのち,RUNNING状態からタイムアウト付きのWAITING状態(ミューテックス待ち状態)へと遷移させます。
なお,ミューテックス待ち状態の解除は,以下の場合に行われ,ミューテックス待ち状態からREADY状態へと遷移します。
パラメータmtxidで指定されたミューテックスをロックします。
ただし,本サービス・コールを発行した際,対象ミューテックスをロックすることができなかった(すでに他タスクがロックしていた)場合には,自タスクを対象ミューテックスの待ちキューにキューイングしたのち,RUNNING状態からタイムアウト付きのWAITING状態(ミューテックス待ち状態)へと遷移させます。
なお,ミューテックス待ち状態の解除は,以下の場合に行われ,ミューテックス待ち状態からREADY状態へと遷移します。
#include <kernel.h> /*標準ヘッダ・ファイルの定義*/ #include <kernel_id.h> /*システム情報ヘッダ・ファイルの定義*/ void task ( VP_INT exinf ) { ER ercd; /*変数の宣言*/ ID mtxid = ID_MTX1; /*変数の宣言,初期化*/ TMO tmout = 3600; /*変数の宣言,初期化*/ ............ ............ /*ミューテックスのロック(タイムアウト付き)*/ ercd = tloc_mtx ( mtxid, tmout ); if ( ercd == E_OK ) { ............ /*ロック状態*/ ............ unl_mtx ( mtxid ); /*ミューテックスのロック解除*/ } else if ( ercd == E_RLWAI ) { ............ /*強制終了処理*/ ............ } else if ( ercd == E_TMOUT ) { ............ /*タイムアウト処理*/ ............ } ............ ............ } |
- unl_mtx
パラメータmtxidで指定されたミューテックスのロック状態を解除します。
ただし,本サービス・コールを発行した際,対象ミューテックスの待ちキューにタスクがキューイングされていた場合には,ミューテックスのロック解除処理後,ただちに該当タスク(待ちキューの先頭タスク)によるミューテックスのロック処理が行われます。
このとき,該当タスクは,待ちキューから外れ,WAITING状態(ミューテックス待ち状態)からREADY状態へ,またはWAITING-SUSPENDED状態からSUSPENDED状態へと遷移します。
以下に,本サービス・コールの記述例を示します。
パラメータmtxidで指定されたミューテックスのロック状態を解除します。
ただし,本サービス・コールを発行した際,対象ミューテックスの待ちキューにタスクがキューイングされていた場合には,ミューテックスのロック解除処理後,ただちに該当タスク(待ちキューの先頭タスク)によるミューテックスのロック処理が行われます。
このとき,該当タスクは,待ちキューから外れ,WAITING状態(ミューテックス待ち状態)からREADY状態へ,またはWAITING-SUSPENDED状態からSUSPENDED状態へと遷移します。
以下に,本サービス・コールの記述例を示します。
#include <kernel.h> /*標準ヘッダ・ファイルの定義*/ #include <kernel_id.h> /*システム情報ヘッダ・ファイルの定義*/ void task ( VP_INT exinf ) { ER ercd; /*変数の宣言*/ ID mtxid = ID_MTX1; /*変数の宣言,初期化*/ ............ ............ ercd = loc_mtx ( mtxid ); /*ミューテックスのロック*/ if ( ercd == E_OK ) { ............ /*ロック状態*/ ............ unl_mtx ( mtxid ); /*ミューテックスのロック解除*/ } else if ( ercd == E_RLWAI ) { ............ /*強制終了処理*/ ............ } ............ ............ } |
備考 ミューテックスのロック解除が可能なタスクは“対象ミューテックスをロックしたタスク”に限られます。このため,自タスクがロックしていないミューテックスに対して本サービス・コールを発行した場合には,何も処理は行わず,戻り値としてE_ILUSEを返します。
- ref_mtx,iref_mtx
パラメータmtxidで指定されたミューテックスのミューテックス詳細情報(ロックの有無,待ちタスクの有無など)をパラメータpk_rmtxで指定された領域に格納します。
以下に,本サービス・コールの記述例を示します。
パラメータmtxidで指定されたミューテックスのミューテックス詳細情報(ロックの有無,待ちタスクの有無など)をパラメータpk_rmtxで指定された領域に格納します。
以下に,本サービス・コールの記述例を示します。
#include <kernel.h> /*標準ヘッダ・ファイルの定義*/ #include <kernel_id.h> /*システム情報ヘッダ・ファイルの定義*/ void task ( VP_INT exinf ) { ID mtxid = ID_MTX1; /*変数の宣言,初期化*/ T_RMTX pk_rmtx; /*データ構造体の宣言*/ ID htskid; /*変数の宣言*/ ID wtskid; /*変数の宣言*/ ATR mtxatr; /*変数の宣言*/ ............ ............ ref_mtx ( mbxid, &pk_rmtx ); /*ミューテックス詳細情報の参照*/ htskid = pk_rmtx.htskid; /*ロックの有無の獲得*/ wtskid = pk_rmtx.wtskid; /*待ちタスクの有無の獲得*/ mtxatr = pk_rmtx.mtxatr; /*属性の獲得*/ ............ ............ } |