第4章  タスク付属同期機能
 本章では,RI600V4が提供しているタスク付属同期機能について解説しています。
 
 RI600V4におけるタスク付属同期機能では,タスクに従属した同期機能を提供しています。
 
 起床待ち状態への移行(永久待ち)は,以下に示したサービス・コールを処理プログラムから発行することにより実現されます。
 
 -	 
slp_tsk
自タスクをRUNNING状態からWAITING状態(起床待ち状態)へと遷移させます。
ただし,本サービス・コールを発行した際,自タスクの起床要求がキューイングされていた(起床要求カウンタ>0)場合には,状態操作処理は行わず,起床要求カウンタから1を減算します。
なお,起床待ち状態の解除は,以下の場合に行われます。
 
 
| 
 #include        "kernel.h"              /*標準ヘッダ・ファイルの定義*/
 
 #include        "kernel_id.h"           /*cfg600が出力するヘッダ・ファイルの定義*/
 
 
 
 void task ( VP_INT exinf )
 
 {
         ER      ercd;                   /*変数の宣言*/
 
 
         ............
         ............
 
 
         ercd = slp_tsk ( );             /*起床待ち状態への移行(永久待ち)*/
 
 
         if ( ercd == E_OK ) {
                 ............            /*正常終了処理*/
         } else if ( ercd == E_RLWAI ) {
                 ............            /*強制終了処理*/
                 ............
         }
 
 
         ............
         ............
 }
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 起床待ち状態への移行(タイムアウト付き)は,以下に示したサービス・コールを処理プログラムから発行することにより実現されます。
 
 -	 
tslp_tsk
自タスクをRUNNING状態からタイムアウト付きのWAITING状態(起床待ち状態)へと遷移させます。
ただし,本サービス・コールを発行した際,自タスクの起床要求がキューイングされていた(起床要求カウンタ>0)場合には,状態操作処理は行わず,起床要求カウンタから1を減算します。
なお,起床待ち状態の解除は,以下の場合に行われます。
 
  
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 パラメータtmout で指定された待ち時間が経過した。
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 #include        "kernel.h"              /*標準ヘッダ・ファイルの定義*/
 
 #include        "kernel_id.h"           /*cfg600が出力するヘッダ・ファイルの定義*/
 
 
 
 void task ( VP_INT exinf )
 
 {
         ER      ercd;               /*変数の宣言*/
         TMO     tmout = 3600;       /*変数の宣言,初期化*/
 
 
         ............
         ............
 
 
         ercd = tslp_tsk ( tmout );  /*起床待ち状態への移行(タイムアウト付き)*/
 
 
         if ( ercd == E_OK ) {
                 ............        /*正常終了処理*/
                 ............
         } else if ( ercd == E_RLWAI ) {
                 ............        /*強制終了処理*/
                 ............
         } else if ( ercd == E_TMOUT ) {
                 ............        /*タイムアウト処理*/
                 ............
         }
 
 
         ............
         ............
 }
 | 
 
 タスクの起床は,以下に示したサービス・コールを処理プログラムから発行することにより実現されます。
 
 -	 
wup_tsk,
iwup_tsk
パラメータ
tskidで指定されたタスクをWAITING状態(起床待ち状態)からREADY状態へ,またはWAITING-SUSPENDED状態からSUSPENDED状態へと遷移させます。
ただし,本サービス・コールを発行した際,対象タスクが起床待ち状態以外の場合には,状態操作処理は行わず,起床要求カウンタに1を加算します。
以下に,本サービス・コールの記述例を示します。
 
 
| 
 #include        "kernel.h"              /*標準ヘッダ・ファイルの定義*/
 
 #include        "kernel_id.h"           /*cfg600が出力するヘッダ・ファイルの定義*/
 
 
 
 void task ( VP_INT exinf )
 
 {
         ID      tskid = 8;              /*変数の宣言,初期化*/
 
 
         ............
         ............
 
 
         wup_tsk ( tskid );              /*タスクの起床*/
 
 
         ............
         ............
 }
 | 
 
 備考	 RI600V4が管理する起床要求カウンタは,8ビット幅で構成されています。このため,本サービス・コールでは,起床要求数が255回を超える場合には,起床要求のキューイング(起床要求カウンタの加算処理)は行わず,戻り値としてE_QOVRを返します。
 
 起床要求の解除は,以下に示したサービス・コールを処理プログラムから発行することにより実現されます。
 
 -	 
can_wup,
ican_wup
パラメータ
tskidで指定されたタスクにキューイングされている起床要求をすべて解除(起床要求カウンタに0を設定)します。
なお,本サービス・コールは戻り値として解除した起床要求数を返します。
以下に,本サービス・コールの記述例を示します。
 
 
| 
 #include        "kernel.h"              /*標準ヘッダ・ファイルの定義*/
 
 #include        "kernel_id.h"           /*cfg600が出力するヘッダ・ファイルの定義*/
 
 
 
 void task ( VP_INT exinf )
 
 {
         ER_UINT ercd;                   /*変数の宣言*/
         ID      tskid = 8;              /*変数の宣言,初期化*/
 
 
         ............
         ............
 
 
         ercd = can_wup ( tskid );       /*起床要求の解除*/
 
 
         if ( ercd >= 0 ) {
                 ............            /*正常終了処理*/
                 ............
         }
 
 
         ............
         ............
 }
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 WAITING状態の強制解除は,以下に示したサービス・コールを処理プログラムから発行することにより実現されます。
 
 -	 
rel_wai,
irel_wai
パラメータ
tskidで指定されたタスクのWAITING状態を強制的に解除します。これにより,対象タスクは待ちキューから外れ,WAITING状態からREADY状態へ,またはWAITING-SUSPENDED状態からSUSPENDED状態へと遷移します。
なお,本サービス・コールの発行によりWAITING状態を解除されたタスクには,WAITING状態へと遷移するきっかけとなったサービス・コール(
slp_tsk,
wai_semなど)の戻り値としてE_RLWAIを返します。
以下に,本サービス・コールの記述例を示します。
 
 
| 
 #include        "kernel.h"              /*標準ヘッダ・ファイルの定義*/
 
 #include        "kernel_id.h"           /*cfg600が出力するヘッダ・ファイルの定義*/
 
 
 
 void task ( VP_INT exinf )
 
 {
         ID      tskid = 8;              /*変数の宣言,初期化*/
 
 
         ............
         ............
 
 
         rel_wai ( tskid );              /*WAITING状態の強制解除*/
 
 
         ............
         ............
 }
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 備考1	 本サービス・コールでは,解除要求のキューイングが行われません。このため,対象タスクがWAITING状態またはWAITING-SUSPENDED状態以外の場合には,戻り値としてE_OBJを返します。
 
 備考2	 本サービス・コールでは,SUSPENDED状態の解除は行われません。
 
 SUSPENDED状態への移行は,以下に示したサービス・コールを処理プログラムから発行することにより実現されます。
 
 -	 
sus_tsk,
isus_tsk
パラメータ
tskidで指定されたタスクをRUNNING状態からSUSPENDED状態へ,READY状態からSUSPENDED状態へ,またはWAITING状態からWAITING-SUSPENDED状態へと遷移させます。
ただし,本サービス・コールを発行した際,対象タスクがSUSPENDED状態,またはWAITING-SUSPENDED状態へと遷移していた場合には,戻り値としてE_QOVRを返します。
以下に,本サービス・コールの記述例を示します。
 
 
| 
 #include        "kernel.h"              /*標準ヘッダ・ファイルの定義*/
 
 #include        "kernel_id.h"           /*cfg600が出力するヘッダ・ファイルの定義*/
 
 
 
 void task ( VP_INT exinf )
 
 {
         ID      tskid = 8;              /*変数の宣言,初期化*/
 
 
         ............
         ............
 
 
         sus_tsk ( tskid );              /*SUSPENDED状態への移行*/
 
 
         ............
         ............
 }
 | 
 
 SUSPENDED状態の解除は,以下に示したサービス・コールを処理プログラムから発行することにより実現されます。
 
 -	 
rsm_tsk,
irsm_tsk
パラメータ
tskidで指定されたタスクをSUSPENDED状態からREADY状態へ,またはWAITING-SUSPENDED状態からWAITING状態へと遷移させます。
以下に,本サービス・コールの記述例を示します。
 
 
| 
 #include        "kernel.h"              /*標準ヘッダ・ファイルの定義*/
 
 #include        "kernel_id.h"           /*cfg600が出力するヘッダ・ファイルの定義*/
 
 
 
 void task ( VP_INT exinf )
 
 {
         ID      tskid = 8;              /*変数の宣言,初期化*/
 
 
         ............
         ............
 
 
         rsm_tsk ( tskid );              /*SUSPENDED状態の解除*/
 
 
         ............
         ............
 }
 | 
 
 備考1	 本サービス・コールでは,解除要求のキューイングが行われません。このため,対象タスクがSUSPENDED状態またはWAITING-SUSPENDED状態以外の場合には,戻り値としてE_OBJを返します。
 
 SUSPENDED状態の強制解除は,以下に示したサービス・コールを処理プログラムから発行することにより実現されます。
 
 -	 
frsm_tsk,
ifrsm_tsk
パラメータ
tskidで指定されたタスクをSUSPENDED状態からREADY状態へ,またはWAITING-SUSPENDED状態からWAITING状態へと遷移させます。
以下に,本サービス・コールの記述例を示します。
 
 
| 
 #include        "kernel.h"              /*標準ヘッダ・ファイルの定義*/
 
 #include        "kernel_id.h"           /*cfg600が出力するヘッダ・ファイルの定義*/
 
 
 
 void task ( VP_INT exinf )
 
 {
         ID      tskid = 8;              /*変数の宣言,初期化*/
 
 
         ............
         ............
 
 
         frsm_tsk ( tskid );             /*SUSPENDED状態の強制解除*/
 
 
         ............
         ............
 }
 | 
 
 備考1	 本サービス・コールでは,解除要求のキューイングが行われません。このため,対象タスクがSUSPENDED状態またはWAITING-SUSPENDED状態以外の場合には,戻り値としてE_OBJを返します。
 
 備考2	 RI600V4では,サスペンド要求のネストはできません。このため,本サービス・コールは
rsm_tsk,
irsm_tskとまったく同じ処理を行います。
 
 時間経過待ち状態への移行は,以下に示したサービス・コールを処理プログラムから発行することにより実現されます。
 
 -	 
dly_tsk
自タスクをパラメータ
dlytimで指定された遅延時間が経過するまでの間,RUNNING状態からWAITING状態(時間経過待ち状態)へと遷移させます。
なお,時間経過待ち状態の解除は,以下の場合に行われます。
 
  
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 パラメータdlytim で指定された遅延時間が経過した。
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 #include        "kernel.h"              /*標準ヘッダ・ファイルの定義*/
 
 #include        "kernel_id.h"           /*cfg600が出力するヘッダ・ファイルの定義*/
 
 
 
 void task ( VP_INT exinf )
 
 {
         ER      ercd;                   /*変数の宣言*/
         RELTIM  dlytim = 3600;          /*変数の宣言,初期化*/
 
 
         ............
         ............
 
 
         ercd = dly_tsk ( dlytim );      /*時間経過待ち状態への移行*/
 
 
         if ( ercd == E_OK ) {
                 ............            /*正常終了処理*/
                 ............
         } else if ( ercd == E_RLWAI ) {
                 ............            /*強制終了処理*/
                 ............
         }
 
 
         ............
         ............
 }
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 備考	 
dlytimに0を指定すると,次回の基本クロック割り込み発生までが遅延時間となります。
 
 4.9	 タイムアウト付き起床待ちと時間経過待ちの違い
 
 タイムアウト付き起床待ちと時間経過待ちには,以下にのような違いがあります。
 
 表4−1  タイムアウト付き起床待ちと時間経過待ちの違い
 
 
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 起床要求をキューイング(時間経過待ちの解除は行われない)
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