第4章 タスク付属同期機能
本章では,RI78V4が提供しているタスク付属同期機能について解説しています。
RI78V4におけるタスク付属同期機能では,タスクに従属した同期機能を提供しています。
起床待ち状態への移行(永久待ち,タイムアウト付き)は,以下に示したサービス・コールを処理プログラムから発行することにより実現されます。
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slp_tsk
自タスクをRUNNING状態からWAITING状態(起床待ち状態)へと遷移させます。
これにより,自タスクは,レディ・キューから外れ,RI78V4のスケジューリング対象から除外されます。
ただし,本サービス・コールを発行した際,自タスクに起床要求がキューイングされていた(起床要求カウンタが0x0以外であった)場合には,状態操作処理は実行されず,起床要求カウンタの減算処理(起床要求カウンタから0x1を減算)が実行されます。
なお,起床待ち状態の解除は,以下の場合に行われ,起床待ち状態からREADY状態へと遷移します。
#include <kernel.h> /*標準ヘッダ・ファイルの定義*/
#include <kernel_id.h> /*システム情報ヘッダ・ファイルの定義*/
void
func_task ( VP_INT exinf )
{
ER ercd; /*変数の宣言*/
............
............
ercd = slp_tsk ( ); /*起床待ち状態への移行(永久待ち)*/
if ( ercd == E_OK ) {
............ /*正常終了処理*/
............
} else if ( ercd == E_RLWAI ) {
............ /*強制終了処理*/
............
}
............
............
}
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tslp_tsk
自タスクをRUNNING状態からWAITING状態(起床待ち状態)へと遷移させます。
これにより,自タスクは,レディ・キューから外れ,RI78V4のスケジューリング対象から除外されます。
ただし,本サービス・コールを発行した際,自タスクに起床要求がキューイングされていた(起床要求カウンタが0x0以外であった)場合には,状態操作処理は実行されず,起床要求カウンタの減算処理(起床要求カウンタから0x1を減算)が実行されます。
なお,起床待ち状態の解除は,以下の場合に行われ,起床待ち状態からREADY状態へと遷移します。
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パラメータ tmoutで指定された待ち時間が経過した
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#include <kernel.h> /*標準ヘッダ・ファイルの定義*/
#include <kernel_id.h> /*システム情報ヘッダ・ファイルの定義*/
void
func_task ( VP_INT exinf )
{
ER ercd; /*変数の宣言*/
TMO tmout = 3600; /*変数の宣言,初期化*/
............
............
ercd = tslp_tsk ( tmout ); /*起床待ち状態への移行(タイムアウト付き)*/
if ( ercd == E_OK ) {
............ /*正常終了処理*/
............
} else if ( ercd == E_RLWAI ) {
............ /*強制終了処理*/
............
} else if ( ercd == E_TMOUT ) {
............ /*タイムアウト処理*/
............
}
............
............
}
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備考 待ち時間
tmoutにTMO_FEVRが指定された際には“
slp_tskと同等の処理”を実行します。
タスクの起床は,以下に示したサービス・コールを処理プログラムから発行することにより実現されます。
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wup_tsk,
iwup_tsk
パラメータ
tskidで指定されたタスクのWAITING状態(起床待ち状態)を解除します。
これにより,対象タスクは,起床待ち状態からREADY状態へ,またはWAITING-SUSPENDED状態からSUSPENDED状態へと遷移します。
ただし,本サービス・コールを発行した際,対象タスクが起床待ち状態以外であった場合には,状態操作処理は実行されず,起床要求カウンタの加算処理(起床要求カウンタに0x1を加算)が実行されます。
以下に,本サービス・コールの記述例を示します。
#include <kernel.h> /*標準ヘッダ・ファイルの定義*/
#include <kernel_id.h> /*システム情報ヘッダ・ファイルの定義*/
void
func_task ( VP_INT exinf )
{
ID tskid = ID_tskA; /*変数の宣言,初期化*/
............
............
wup_tsk ( tskid ); /*タスクの起床*/
............
............
}
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備考1 本サービス・コールを発行した際,対象タスクがREADY状態へと遷移する場合は,該当タスクの優先度に対応したレディ・キューの最後尾にキューイングし直す処理もあわせて実行されます。
備考2 RI78V4が管理している起床要求カウンタは,7ビット幅で構成されています。このため,本サービス・コールの発行により,起床要求数が最大カウント値127を越える場合には,カウンタ操作処理は実行されず,戻り値として“E_QOVR”が返されます。
起床要求の解除は,以下に示したサービス・コールを処理プログラムから発行することにより実現されます。
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can_wup,
ican_wup
パラメータ
tskidで指定されたタスクにキューイングされている起床要求をすべて解除(起床要求カウンタに0x0を設定)します。
なお,本サービス・コールが正常終了した際には,戻り値として“解除した起床要求数”が返されます。
以下に,本サービス・コールの記述例を示します。
#include <kernel.h> /*標準ヘッダ・ファイルの定義*/
#include <kernel_id.h> /*システム情報ヘッダ・ファイルの定義*/
void
func_task ( VP_INT exinf )
{
ER_UINT ercd; /*変数の宣言*/
ID tskid = ID_tskA; /*変数の宣言,初期化*/
............
............
ercd = can_wup ( tskid ); /*起床要求の解除*/
if ( ercd >= 0x0 ) {
............ /*正常終了処理*/
............
}
............
............
}
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WAITING状態の強制解除は,以下に示したサービス・コールを処理プログラムから発行することにより実現されます。
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rel_wai,
irel_wai
パラメータ
tskidで指定されたタスクのWAITING状態を強制的に解除します。
これにより,対象タスクは待ちキューから外れ,WAITING状態からREADY状態へ,またはWAITING-SUSPENDED状態からSUSPENDED状態へと遷移します。
なお,本サービス・コールの発行によりWAITING状態を解除されたタスクには,WAITING状態へと遷移するきっかけとなったサービス・コール(
slp_tsk,
wai_semなど)の戻り値として“E_RLWAI”が返されます。
以下に,本サービス・コールの記述例を示します。
#include <kernel.h> /*標準ヘッダ・ファイルの定義*/
#include <kernel_id.h> /*システム情報ヘッダ・ファイルの定義*/
void
func_task ( VP_INT exinf )
{
ID tskid = ID_tskA; /*変数の宣言,初期化*/
............
............
rel_wai ( tskid ); /*WAITING状態の強制解除*/
............
............
}
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備考1 本サービス・コールを発行した際,対象タスクがREADY状態へと遷移する場合は,該当タスクの優先度に対応したレディ・キューの最後尾にキューイングし直す処理もあわせて実行されます。
備考2 本サービス・コールでは,強制解除要求のキューイングが行われません。このため,対象タスクがWAITING状態,またはWAITING-SUSPENDED状態以外の場合には,戻り値として“E_OBJ”が返されます。
SUSPENDED状態への移行は,以下に示したサービス・コールを処理プログラムから発行することにより実現されます。
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sus_tsk,
isus_tsk
パラメータ
tskidで指定されたタスクのサスペンド要求カウンタに0x1を加算したのち,対象タスクをRUNNING状態からSUSPENDED状態へ,READY状態からSUSPENDED状態へ,またはWAITING状態からWAITING-SUSPENDED状態へと遷移させます。
ただし,本サービス・コールを発行した際,対象タスクがSUSPENDED状態,またはWAITING-SUSPENDED状態へと遷移していた場合には,状態操作処理は実行されず,サスペンド要求カウンタの加算処理のみが実行されます。
なお,SUSPENDED状態の解除は,以下の場合に行われ,SUSPENDED状態からREADY状態へと遷移します。
#include <kernel.h> /*標準ヘッダ・ファイルの定義*/
#include <kernel_id.h> /*システム情報ヘッダ・ファイルの定義*/
void
func_task ( VP_INT exinf )
{
ID tskid = ID_tskA; /*変数の宣言,初期化*/
............
............
sus_tsk ( tskid ); /*SUSPENDED状態への移行*/
............
............
}
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備考1 本サービス・コールを発行した際,対象タスクが自タスクの場合は,レディ・キューから外れ,RI78V4のスケジューリング対象から除外されます。
備考2 RI78V4が管理するサスペンド要求カウンタは,7ビット幅で構成されています。このため,本サービス・コールの発行により,サスペンド要求数が最大カウント値127を越える場合には,カウンタ操作処理は実行されず,戻り値として“E_QOVR”が返されます。
SUSPENDED状態の解除は,以下に示したサービス・コールを処理プログラムから発行することにより実現されます。
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rsm_tsk,
irsm_tsk
パラメータ
tskidで指定されたタスクのサスペンド要求カウンタから0x1を減算したのち,対象タスクのSUSPENDED状態を解除します。
これにより,対象タスクは,SUSPENDED状態からREADY状態へ,またはWAITING-SUSPENDED状態からWAITING状態へと遷移します。
ただし,本サービス・コールを発行した際,サスペンド要求がキューイングされていた(減算結果が0x0以外)場合には,状態操作処理は実行されず,サスペンド要求カウンタの減算処理のみが実行されます。
以下に,本サービス・コールの記述例を示します。
#include <kernel.h> /*標準ヘッダ・ファイルの定義*/
#include <kernel_id.h> /*システム情報ヘッダ・ファイルの定義*/
void
func_task ( VP_INT exinf )
{
ID tskid = ID_tskA; /*変数の宣言,初期化*/
............
............
rsm_tsk ( tskid ); /*SUSPENDED状態の解除*/
............
............
}
|
備考1 本サービス・コールを発行した際,対象タスクがREADY状態へと遷移する場合は,該当タスクの優先度に対応したレディ・キューの最後尾にキューイングし直す処理もあわせて実行されます。
備考2 本サービス・コールでは,解除要求のキューイングが行われません。このため,対象タスクがSUSPENDED状態,またはWAITING-SUSPENDED状態以外の場合には,戻り値として“E_OBJ”が返されます。
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frsm_tsk,
ifrsm_tsk
パラメータ
tskidで指定されたタスクのサスペンド要求カウンタに0x0を設定し,対象タスクのSUSPENDED状態を強制的に解除します。
これにより,対象タスクは,SUSPENDED状態からREADY状態へ,またはWAITING-SUSPENDED状態からWAITING状態へと遷移します。
以下に,本サービス・コールの記述例を示します。
#include <kernel.h> /*標準ヘッダ・ファイルの定義*/
#include <kernel_id.h> /*システム情報ヘッダ・ファイルの定義*/
void
func_task ( VP_INT exinf )
{
ID tskid = ID_tskA; /*変数の宣言,初期化*/
............
............
frsm_tsk ( tskid ); /*SUSPENDED状態の強制解除*/
............
............
}
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備考1 本サービス・コールを発行した際,対象タスクがREADY状態へと遷移する場合は,該当タスクの優先度に対応したレディ・キューの最後尾にキューイングし直す処理もあわせて実行されます。
備考2 本サービス・コールでは,強制解除要求のキューイングが行われません。このため,対象タスクがSUSPENDED状態,またはWAITING-SUSPENDED状態以外の場合には,戻り値として“E_OBJ”が返されます。
時間経過待ち状態への移行は,以下に示したサービス・コールを処理プログラムから発行することにより実現されます。
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dly_tsk
自タスクをRUNNING状態からWAITING状態(時間経過待ち状態)へと遷移させます。
これにより,自タスクは,レディ・キューから外れ,RI78V4のスケジューリング対象から除外されます。
なお,時間経過待ち状態の解除は,以下の場合に行われ,時間経過待ち状態からREADY状態へと遷移します。
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パラメータ dlytimで指定された遅延時間が経過した
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#include <kernel.h> /*標準ヘッダ・ファイルの定義*/
#include <kernel_id.h> /*システム情報ヘッダ・ファイルの定義*/
void
func_task ( VP_INT exinf )
{
ER ercd; /*変数の宣言*/
RELTIM dlytim = 3600; /*変数の宣言,初期化*/
............
............
ercd = dly_tsk ( dlytim ); /*時間経過待ち状態への移行*/
if ( ercd == E_OK ) {
............ /*正常終了処理*/
............
} else if ( ercd == E_RLWAI ) {
............ /*強制終了処理*/
............
}
............
............
}
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